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黒い百合

115 :名無し物書き@推敲中?:03/12/20 14:04
 楽しいことなのだと。由香は、思う。たとえば額を傷つけることも。服を奪うことも。
集団のなかで、今まさにスカートを脱がせようとしていることも。楽しいことなのだと
思い――それは恐怖に歪む顔が、弱いものの前に立つことで強者になれる気がするから。
 けれど。心のなかでは怒りの炎が燃え盛り、こんな簡単に自分の手のうちで踊る人形を
壊すか捨てるかしてしまいたくなる。こんなものはつまらない。味気ない。
 そう、心がバラバラになって狂うくらいで丁度いい。屈服も服従も意味を為さない。す
ぐに壊れる歯車の時計など、弄りようがないから。だから、弄って弄って、狂わせてみた
いのに。
「つまらない……子ね」
 由香は呟き、ぐずぐずと手を震わせる咲妃のスカートに手をかける――。
 きり、がり、ぶぎゃあららら。引き裂く。布が断ち切れる音、途端に上がる悲鳴。悲
鳴は咲妃のもの。ああ、面白い。赤子の唯一の防護手段は泣くことだというけれど。こ
うして、こちらの気分を害するとわかりながら行なうなんて――浅はかで、幼稚な抗議
を。
「ねえ、咲妃」
 クツリ。クツ、クツ。喉の粘膜が震える。ふぅっという溜息、由香は咲妃の耳元に口
紅を近づけると、優しく、慰めるような明るい声で囁いた。
「つまらない子は……捨てるわよ」
「 え?」
「だってそうでしょう? つまらない玩具の居場所は。
 ……、一つしかないじゃない?」
 腐った林檎がごとり、と落ちて。そう、彼女の頭が傾いだ。濡れた床に落ちた。
「すぐに従っては駄目。理不尽な私に、反抗しなさい。そして」
 その、異臭を放つ林檎を口に含むように――由香は咲妃の髪に接吻する。
「……殺されなさい」

 ココロのピンが抜けてころころと転がる。咲妃の意識が奈落へと沈む。
 由香はそこを先ほど引きちぎった咲妃のスカートで拭ってから、彼女を背中に抱え、騒
然とした廊下を歩き始めた。
 昼休みのチャイムが七回。ナザレのイエスの断末魔のように鳴り響く――。

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